暮らしの中の図書館(島体験生より)
2022年10月13日~12月23日まで、海士町の「大人の島体験生」として海士町中央図書館に勤務しておりました、鏑木航河です。3ヶ月海士町で図書館スタッフとして生活していた私から「暮らしの中の図書館」という視点で図書館の事をお伝えさせていただきたいと思います。
●本好きから見た海士町中央図書館
暖かい雰囲気で誰でも利用しやすいような場所だと思いました。カフェコーナーが設置してあり、田んぼが覗ける窓側の席が数席ある。暖かい時期はテラス席が、寒い時期には絵本コーナーにコタツもあって、長時間でも過ごすことを許される空間だと感じました。本が目的でなくても過ごしやすいような印象を受けたので、初めて来たときは、窓際の席で絵ハガキを書いていました。図書館勤務が決まる前に利用者登録をしたときも、スタッフの方が優しく応対してくださったことを覚えています。
仕事で棚の中を歩き回っていると、読みたい本が続々と見つかります。借りた本が読み終わったら、次の本を借りて読むのがルーティンになっていました。借りた本は自宅の縁側で読んだり、天気のいい日は外に出て景色のよい場所で読んだりしていました。図書館で借りた本を読むことが私の暮らしの一部になっていました。
本の種類についてですが、小さな図書館のため読みたい本が全て見つかるというわけではありません。しかし、リクエストに柔軟に対応してくれるため、中央図書館になければ、県内他図書館から取り寄せるか購入してもらうこともできます。
置く場所や費用の関係で都度購入することが難しい人にとっても利用しやすい場所であり、知識やエンターテインメントを支える公共施設としての役割が果たされていました。私のような短期滞在者にとっても、本は購入すると持ち帰るのが大変なので図書館の存在は大いに助かりました。また、私が知っている図書館では注意を受けてしまいそうな子どもの声もこの場所では受け入れられており、親子でも利用しやすそうでした。
その他にも分館や本の宅配便によって、中央図書館に来なくても本を身近に感じられる、移動が難しい方にも本に触れてもらえるなど、文字通り誰でも気軽に本に触れられる環境が整えられていました。
●スタッフとして働いて
図書館スタッフとして勤務していて、無条件に様々な本が目に入るので、自然と本についての知識が多くなりました。利用者の方の探している本が見つからないといったときに、本の場所を案内できるようになっていくのが嬉しかったです。
テーマごとに展示を行う、手に取りやすいように表紙を見せるようにするなど、何気なく利用していた図書館が様々な工夫のもとで成り立っていることを実感しました。また、移動が困難な人のための本の宅配便など、外から想像しているだけではわからない仕事もありました。
地域と関わるイベントが多いのはこの図書館の特徴だと思います。11月の出張図書館として参加したイベントでは、持っていく本を選ばせていただきました。普段の利用者と違う方のイベント参加があったため、新規の利用登録も何名かありました。利用者と積極的にコミュニケーションを取るようにし、おすすめを借りていただいたときは嬉しかったです。結果の見えづらい公共サービスの現場では、利用者の反応を直接受け取ることも大切だと改めて思いました。
12月の図書館フェスティバルでは、実行委員の方と協力してイベントを作り上げていました。私が担当させていただいた「本のソムリエ」は、相手のために本を選び、自分も誰かに本を選んでいただくという企画でした。選んでいただくのはもちろん、相手のために本を選ぶというのも素敵な時間の使い方だと感じました。図書館を通じて新たな繋がりができるのは新鮮でした。
個人的な感想になりますが、業務を通じて本のことを考えていられる時間がとても楽しかったです。また、スタッフしか味わえない開館前や休館日の電気と音楽のない落ち着いた静かな空間がいっそう好きでした。
●海士町の図書館で出会った本
最後にこの図書館で出会ったおすすめの本を紹介します。
「わたしたちは銀のフォークと薬を手にして」 島本理生 幻冬舎
仕事熱心なOLの知世とある秘密を抱えた年上のエンジニア椎名さんのお話です。人に近づきすぎないようにしている椎名さんの臆病な優しさに胸が苦しくなります。
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