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島の図書委員 小室さんの本のオススメ②「その魔球に、まだ名はない」エレン・クレイジス

海士町中央図書館では、図書館の運営をサポートしてくれる住民の方を募り、「島の図書委員会」を開催しています。

今回は、前回に引き続き、委員の一人である小室さんによる本の紹介です。

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「その魔球に、まだ名はない」 

エレン・クレイジス著

最近好きなYouTubeのチャンネルがあります。「ゆる言語学ラジオ」というチャンネルなんですけど…。本を紹介する文章の書きだしで、YouTubeを紹介するのもどうかと思ったのですが、これも面白いので言語学に興味のある方はおすすめです。 

その中で、28番目の回。ダン・アリエリーという行動経済学者の本を紹介していて、この著者の言葉として、「私はこの実験を思いついたとき、胸が高まって眠れなくなった」という体験談の話が出てきました。研究者もワクワクすることを思いつくことが大切で、実験もワクワクするものであるからこそ、いろいろな人に届くそんな話でした。私も胸が高まるほどに面白いアイディアを思いついて眠れない夜を過ごしてみたいです。(このダン・アリエリーの『予想どおりに不合理』という本は図書館に入っています。)

葉っぱと光


もう一つ。『アルテ』という好きな漫画があります。16世紀イタリア・フィレンツェで画家になる女性の話。その10巻。ある人の依頼で肖像画を描くことになり、意気込んで会心の下書きを見せるも、良い反応が返ってこず思い悩む場面。しかしまだやっていないあることに気づいて、「私まだやれることがあるんだ」と嬉しそうな顔をするシーンがあるんです。めっちゃいいシーンです。もう猛烈にワクワク顔です。(ちなみにこのアルテも図書館に入っています。)


やっと本題。7月に読んだのは、エレン・クレイジスの『その魔球に、まだ名はない』です。この本のキーはワクワクです。話は1957年のアメリカ。野球が大好きな10歳の少女ゴードン。リトルリーグのコーチにスカウトされてトライアウトを受ける。見事なピッチングをみせて合格。でも、「ルール違反。女子はリトルリーグに入れない」と言われてしまう。なぜ女子はリトルリーグに入れないのか。その間違いを証明するために調べ始めます。 その最初のきっかけになるのが、図書館のレファレンスだったりします。レファレンスって何かと言うと、自分の今の興味と図書館にあるいろんな本との間を図書館の職員さんが繋げてくれることをいいます。そんなレファレンスのナイスアシストもあったりして、ドンピシャのものを見つけます。たぶんこの時のゴードンはめっちゃワクワクした顔をしていたと思います。

野球ボール

〈すっかり魅せられて、やめられなかった。(p213)〉本文の中で声が出てしまった箇所。私はゴードンと話がしてみたい。前に進むその話を聞きたいです。ゴードンの前進する姿を見て、いろいろな人がゴードンの進む道の後押しをします。そして後押しをしながら、ゴードンのワクワクから、自分のワクワクを思い出したりします。 ゴードンが最後に作るものがあるんです。これがナイスアイディアです。私だったら胸が高まって夜眠れなくなると思います。このゴードンのアイディアを考えた時に、図書館の本の一冊一冊も、その著者のワクワクとアイディアが形になったものなんだなと思ったんです。

世の中には、数にしたら無限の本があって、図書館にはその無限のワクワクが整理されて棚に収まっている。そしてどこかで今日も図書館の収められたワクワクと誰かの興味の種が出会うことがあって、新しい何かが形として出来る。そんな出会いを想像しながら、私もまだ開いたことのない本を手に取りたいなと思います。

海士町中央図書館
島の図書委員 小室勇樹

「その魔球に、まだ名はない」エレン・クレイジス 著


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